2006年07月07日

孤独の北:美城×まっく

「銀河鉄道」を編んだ宮沢賢治を生んだ岩手、いや南部。
私は、高校時代に不思議な感銘と誘惑に駆られて友人と二人、
「遠野物語」を携えて本州北端の地から三陸を下り、遠野を中心に長旅をしたことがある。


「遠野物語」は、実に不思議な本であった。
一読して物語、ストーリーは理解出来る、つまりは頭の中に入る。
して、引き込まれるように読み終え、数度、読み返した記憶がある。

だが、そのストーリーの向こう側が全く見えないのだ。
民話であるのだから某かが見えても良さそうなものであるが、
頼った論評の類も、またも腑に落ちないものばかり。

旅行したのは夏だったが、目的の遠野の地に到着した我ら二人は、
各々の好き好きに、あるいは徒歩にて、あるいは貸自転車に乗り、
「その地」を文字通り経巡り、土地の人達の話に耳傾けた。
有名な河童淵を訪れたのも、その時が始めてである。
夜、それこそ、まさに満天の星を見遣りながら昼のアレコレを交わすも、
むしろ我々は、いつも黙って星を見上げるのに終始していたのを覚えている。

耳目する全てが、何か恐ろしく圧倒的な力を持って迫ってくるのを何度も何度も感じた。
ある時は驟雨に打たれた。
夏の、その地で受けた雨滴は慈雨であるはずなのに、恐ろしかった。
窓にへばりついて、遠くまで雨煙る田のボヤケタ緑を呆然と眺めていた。
ただ当時、私は、ここで簡単に「恐ろしい」と書いたなにかを、全身に浴びるだけで精一杯であった。

北国の恐ろしさは、南国出身の父を持つ私には、あまりに圧倒的過ぎた。
彼の地では、恐怖は感情ではなく、一個の存在として、厳然とあった。
母も北国に源を持ち、そしてまた女房こそは南部は盛岡の出身である。
彼女達の感性、感性の裏にあるもの・・・それは、やはり北国なのだろう。
理解を超える。

ある冬、厚い雲下の岩手・雫石を訪れたことがある。
「雲が、低い・・・」
北国の雲は、地を喰らわんと舌なめずりするように、静かに漂っていた。
そのような日が、時に雪を伴いながら何日も続くのである。
岩手は未だ極北とは言い難いが、それでも私にとっては、全てが凍てついていた。

同じ日本とはいえ、南国の貧しさと北国の貧しさは違う。
とはいえ、北国が賢治を、そして遠野物語を生んだのではないと想う。
その国そのものに賢治が、そして遠野物語が息づいている、
いや、そのものが賢治であり、遠野物語である、と言ったほうが実感に近い。

誤解なきように一視聴者としては好んでいることを前書きして「知床慕情」「北の国から」。
私は、そこに知床も北国もあるようには想えない。
北国にあるもの。
それは、言葉で表するなら「圧倒的な孤独」とでも言うべきものだと想うのである。

賢治に父や男を、あるいは圧倒的な父性を見たとしても、それは当然のことなのかもしれない。
彼の地で、男は男であらずして、女は女であらずして、生きることが出来たかは甚だ疑問だからである。
そして我が子すら糧食になりかねぬ孤独な地で生き残った血に、父性が、母性が宿っても不思議ではあるまい。

愛すべき大地から突き放され、恵みの太陽すら我が身を干乾びさせる。
それでも人は、そこに住まうことを選ばざるを得なかった。
いや、選ばれし者のみが住まうことを許されたのである。
それは、その事実自体が壮大に過ぎる物語だ。

『まっく×美城』潜在的ファン・夢のコラボそのゝ楝賢治「父性的な、あまりに父性的な」

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1. 「まっく×美城」その太宰治「消え去らぬ抒情」  [ 魂暴風*a soul hurricane ]   2006年07月08日 06:54
 北の国には、「死にたくなったら行けばよい」と想い続けていた。のち、二度ほど、その地を踏んだが、「もう、まったく、そんな心地など露もなく・・・」僕はとある寒村の木枯らしに凍えていた。南国生まれの僕には、その土地で交わされるなまり自体に違和感があり、細身に...

この記事へのコメント

1. Posted by 美城丈二   2006年07月08日 06:58
こちらこそお付き合いくださって、その貴重な詩作のお時間を切り売り、努めてくださって大変、恐縮至極、ただ嬉しく嬉しく嬉しく、想われ、このような感じでぼちぼちと参りましょうかね?まっくさま(笑)。丈
2. Posted by まっく   2006年07月09日 20:55
丈様、こんばんは。

コメントが遅れて恐縮です。
拙文に暖かく、また過分なコメント、誠に有り難く。
かように、駄文、書き散らすのみの有様。
御恥ずかしいですが、このような形であれば、
是非とも出来る限り拙稿のアップ、心掛けて参ります。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

まっく 拝

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