2004年11月30日

三者論比 読書作法?

風さんが「カフカ-安部-村上」という三者比較で悩まれているという。
なぜか大して本を読まないはずの私は、この三者の作品を読んだ「過去」がある。


私の「読書」は全くの読書なので、論考を待たないし、そもそも論考をまともに読むことすら少ない(苦笑)。
しかし、この三者を「系譜」のように書く方が、それなりにいた記憶は遠くにある。

三者の、どの作品を、いくつの作品を読んだのだろうか?
この問いは私にとっては無意味で、そのために本を繰って賢しらぶるのは止めておこう。

しかし、今、遠く離れた記憶の感覚を手繰ると、手繰れば手繰るほど、三者から得た感覚が全く異なっていることに驚くと共に、そこに共通点を見出して論考する気持ちも分からなくはない。
三者を、共通に「出口のない不条理な世界観」めいたもので括れば、それは語り易い。

カフカは、確かに「不条理」の言葉と共に読んだ記憶があるが、読後感は全く異なるものだった。
そこに広がるのは、どこか大真面目に滑稽な世界であり人々であって、だからこそ「不条理」と言われるのだろうけれど。
主人公は、どちらかというと粛々としていて、その滑稽な世界で(いかに)生きるかを「選択」し続ける(がために)、意志らしい意志を剥奪された一介の「生物」めいた人物だった。その「生物」に貶められた主人公を描くが故に「実存」だったのかもしれない。
しかし、決して嫌な読後感はなかった。
むしろ何故かしら「あはれ」を感じ、好きな部類に入るだろう。

翻って安部公房の世界は既に茫洋と記憶に薄い。
何冊も読んだ「記憶」があるのに、記憶を消去させる機能でもあったのか。
カフカの世界がネットリとした空気を帯びているのに対し、安部モノは意外と湿度の低い、カラカラした空気感が記憶に残る。
ただ、右に行ったかと思えば次の瞬間に「意味のない意志」で左に行くような、わけの分からない登場人物の行動にアホらしさを感じたはずだ(はずだ、というのも失礼な話だが)。
要は「劇場型不条理」とでも言おうか?それとも作為的不条理?
決して嫌いではなかったが、やはり「意図的に」文学めいていて嫌らしく感じたのは確かだ。安部は「頭」の良い方だからか?

村上春樹はW村上として追い掛けて読んだ記憶がある。
最後に読んだのはどの作品だろうか?いずれ三部作は拷問に耐えるようにしながらも、読んだことは確かだ。
主人公が自ら閉鎖空間を作って篭り篭りして、ヌメヌメした空気が口の中にまで入ってくるような嫌らしさがたまらなかった。
当時、まだ若くて体力も気力もあったから読めたのだろう。
今なら瞬眠させられる自信がある(笑)。
「箱庭」を作っては、その中に入り込み、また箱庭を作っては入り込み。
主人公を本当の拳で打ん殴ったら、死ぬまでそうやって殴られてくれるものなのか、と思ったものだ。乱暴ですね。
要は嫌いなんですね、生理的に。よく頑張って読んだものだと自分を褒めよう。

さて、このように書いてみて初めて気付いたが、確かに三者は「不条理」の言葉で括れる可能性が浮き上がるのは理解出来る。
が、果たして「何故に書いているのか?」という点においては、その心象風景は全く異なるだろう。少なくとも私から見た場合は、であるが。
その(「変化」の)系譜は、系譜の作り手自体の「行きたい先」を暗示するようで気味悪い。

カフカ=甲、安部=乙、村上=丙。
私は、狂った時間軸に入り込んでいるのかもしれない。
しかし実際問題として、手元に残っているのはカフカの文庫本位のものだ。

為念、
好き嫌いと言っても作品に対する印象としてのもの。
三者に対する特別な思いいれもなければ、そのファンにも特別な感情は起きませぬ。

まっく記 at 17:20 記事全文
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この記事へのコメント

1. Posted by 風 薫   2004年11月30日 18:44
 風です。拝読させていただきました。ひどく嬉しく有難いご意見と感じました。誠に勝手ではありますが、貴方様のサイトをLINKさせていただきます。今後もお暇なおりで、結構です。よろしかったら、ご意見なり頂ければ幸いに存じます。
2. Posted by まっく   2004年11月30日 20:12
かくも丁重なコメントを有難う御座います。
乱暴な文筆とも想えぬ代物、しかも安部さんの苗字まで間違えて(訂正させて頂きました)。

リンクまで頂いて、光栄至極に過ぎます。
習作ならぬ醜作やらを乱暴に放っている押入れです。
あまりに見苦しければ片付けて下さい。

いつも幅広い分野への、風さんの優しく戸惑ったような視線が素晴らしく知的で楽しませて頂いてます。
興味の分野が重なっているので、実は少し嬉しかったりします。
今後とも御邪魔させて頂ければ幸甚です。

風 様

     愚筆 まっく

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