2004年11月30日

ピンセット・デモン

ピンセットで抓むと、ウニウニと空中に滑った体をくねらせる。
やがて頼るべきなにもないことを悟ると、今度はわずかばかりの頼りと「自分を」抓んでいるピンセットに絡みつく。


メダカを飼ったことがあれば、一度はコヤツ「水蛭」に厄介な思いをしたことがあろう。
僅かな隙間に潜みつつ、何処で光を感じるのか夜中にコソリユラリと水中へと小さな牙を伴って狩りに出る。

小さく頑固にへばり付く彼らの卵。
数日もすれば、中には小さな水蛭の赤ちゃんが立派に牙を伴っている。
まるっきり、オカルトかエイリアンだ。

せっかく飼い始めたメダカが変死を始めたら、水蛭の浸入を疑っていい。
あるいはホテイ草のわずかな隙間に身を潜め、あるいは湿り気を残した砂利に卵のままで。
彼らは実に巧妙に水槽に紛れ込んでくる。

一度、捕獲(?)に失敗して手に食いつかれたことがある。
彼らは、忍者よろしく水中遊泳と隙間に潜るのを実に得手としているのだ。
なるほど人間ですら痛みを感じる奴らの牙は、喰らいついたら決して「獲物」を手放しはしないだろう。
かくて彼らを駆逐すべく、我はピンセットを高く掲げりて。

ピンセットの先端のギザギザは、実に素晴らしき大発明だ。
何するといってもギザギザは先端を大きくしてしまうので、何故にこんな邪魔者がついているのか。
それは、何と水蛭捕獲のためにに不可欠なものだったとは。

端の一方を吸い口にへばり付く彼らは、外見的にはどちらを頭とするともしれぬ紐である。
しかしピンセットで抓むや、間違いなく口のある方で水槽やらなにやら、当たり構わず吸い付いて必死の抵抗を見せる。

「ポンッ」とでも聞こえてきそうな感触と共に、あえなくスッポン口は新たな吸い先を探しはしても、こちらも易々とは譲れない。
ピンセットでしっかりと掴んで掲げて見ると、彼らは光を受けてヌメ喘ぐ。
やがて少しでも水を求めて、己が命を言葉通りに「掴んでいる」ピンセットに絡みつく。

そのままピンセットで抓んでいるのも疲れるし、観察が課題なわけではない。
そこらの乾いた石上になすると、水蛭は何が起きたか分からぬような錯乱状態で萎みつつ悶え続ける。

しかし、やがて身悶えにも疲れると、グッタリと身を石上に投げ出す。
少しづつ体内の水分も去りゆくのか、干上がったミミズよろしく惨めな姿に化しながら。

途中、悪戯につついてみれば、何か助けが来たとでも思うのか、必死にピンセットに絡みつく。
絡みついて来たといえ、そのまま戻すわけにもいくまいに。

水蛭がメダカと仲良くしててくれさえいれば問題はないのだ。
いや、水蛭を飼いたいという人の下にいれば問題ないというが正しいか。
兎にも角にも残念ながら、私はピンセットで君を抓まなくちゃならんのだ。

「ならん」理由を問われても困る。
それなら問い返そうじゃぁ、ないか。
何故、君はこの水槽の中に入り込んだんだい?と。

こんなに穏やかな陽の光の中で死ねるんだ。
こりゃあ、最高じゃないか。

一言、呟きでもしなけりゃぁ、私だって遣り切れないよ。
その呟きだけでも、君が聞いてくれりゃぁなぁ。

まっく記 at 13:34 記事全文
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